非破壊分析とは、物体を破壊することなく内部や表面の構造を検査・評価する技術です。高品質で安全性の高い製品づくりが求められる食品加工、薬品、機械、電池など多くの製造業で活用されているほか、大学・研究機関などの学術分野でも幅広く用いられています。
非破壊分析には、主にX線CT検査、X線透視検査、超音波探傷検査、浸透探傷検査といった手法が用いられます。今回は、工業生産物を破壊せずに内部の構造観察や欠陥検査を可能にする「産業用X線CT装置」についてご紹介いたします。

アルミ鋳物の巣の事例
なお、このソリューションに関する当社の製品・サービスは、文末の「JOHNANソリューション」欄に掲載しております。>詳しくはこちら
産業用X線CT装置とは
X線CT装置には、大きく分けて人体検査に用いる医療用X線CT装置と、人体以外の物体の内部観察に用いる産業用X線CT装置があります。 「CT」とはcomputed tomographyの略で、「コンピュータ断層撮影法」と呼ばれます。 物質の密度によってX線の吸収率が異なり、このコントラストを利用して断層像が作られます。
産業用X線CT装置とは、工業製品などの検査対象物にX線を360度方向から照射し、得られた透視画像をコンピュータで再構成処理をして断層画像を作り、断層画像から3次元画像を生成する装置です。断層画像や3次元画像を見ることで、対象物を破壊することなく内部を観察・分析することができます。
最近では、以下のような新しい技術も開発されており、産業用X線CT装置は進化を続けています。
- より大きな撮影視野が得られるオフセットスキャン
- 2つのX線エネルギーを用いたデュアルエネルギー撮影による物質判別
- 直線状に動く対象物を停止させることなく撮影するCT技術
産業用X線CT装置の有効性
産業用X線CT装置は、以下のような有効性があります。
(1)さまざまな工業生産物の内部を破壊することなく可視化する
産業用X線CT装置の中でも、マイクロフォーカスX線発生装置を搭載したものは高分解能で、より細かい内部のボイド、クラック、異物の観察が可能になります。樹脂のフィラーの状態を観察することも可能です。また、高電圧のX線発生装置を使用すれば、アルミニウム鋳物などの高密度材料の工業生産物の内部観察も可能になります。

(2)工業生産物における不具合リスクを推測する
産業用X線CT装置を活用することで、工業生産物が不具合を起こすリスクを予め把握し、信頼性寿命やどのような不良モードで故障していくのかを観察することができます。工業生産物の寿命や不具合が分かれば、製品設計や材料選定等にフィードバックをかけ、製品の安全性や性能の向上を図ることが可能です。
(3)不良品の市場流出を防ぐ
工業生産物の量産ラインにおいては、品質規格に応じたインライン・オフラインのスクリーニングが可能となり、不良品の市場流出を防ぐことが可能となります。最近では、インラインで一直線状に動く検査物を停止させずに撮影し、限られた方向から得た投影データで画像再構成を行う技術も生まれており、より短時間で効率的な検査が可能となりました。ものづくりの信頼性を高める上で、産業用X線CT装置は重要な役割を担っています。
産業用X線CT装置を購入する際の注意点
装置導入の際、機種の選定に関わる重要な項目を挙げてみました。
(1)試料の材料
撮影したい試料の材料によって最適なX線管のパワーが変わります。材料の密度が高いほどX線の吸収率は高くなります。そのため、金属はX線が透過しにくいので大きな電圧が必要になり、水や樹脂はX線が透過しやすいので金属ほど大きな電圧は必要ありません。金属と非金属の混合材料の場合は、この間のX線管のパワーが必要になります。
X線管は一般的に高電圧になるほど価格も上がり、サイズは大きくなります。そのため筐体も大きくなり、X線の漏洩を防ぐ鉛の量も増えるため重量もアップします。装置価格のみならず、輸送費用・工数、設置環境への負荷を減らすためにも、材料に適した電圧のX線管を選ぶことが重要です。
(2)試料のサイズ、関心領域、ワークサイズ
観察したい試料のサイズによって最適な検出器のサイズが変わります。観察したいエリア(関心領域)、ワークサイズ、どの程度の解像度を必要とするのかでも変わります。一般的に大きくなるほど価格は上がります。
(3)装置の用途
開発用途なのか量産なのかでも最適な装置の仕様は変わります。量産ラインで使用する場合は、検査タクトタイム、サイクルタイムも重要な関心事となります。また生産技術的な観点も考慮した仕様にする必要があります。場合によってはメーカーの標準機では目的に合わず特注品になるケースもあります。
実際の工業生産物は、複合材料であることが多く、観察したい領域・内容も多種多様で複雑なことが多いです。また上記に挙げたポイントのほかにも、設置環境の面など、産業用X線CT装置の導入検討段階ではクリアにすべき項目が色々とあります。まずはここに挙げたポイントを踏まえて一度メーカーに相談してみましょう。通常、まずは撮像テストを行い、その結果を用いて機種選定・導入に至ります。


X線検査の代行サービスの活用について
実際に装置の購入となると、設備投資予算の問題等ですぐに購入できないケースがあります。 そのような場合には、メーカーが行っている有償のX線検査受託サービスを利用してみてはいかがでしょうか。
X線CT装置の撮影に精通したスタッフが、お客様から提供いただいた試料とヒアリング内容を基に最適な条件で撮影を行います。
製品内部の状態観察・検査・計測、ボイドや空隙、異物の位置関係の確認、検体の割れ・欠陥等の嵌合状態(はめ合い)のチェック、寸法計測、故障解析等を代行します。 また、X線CT装置のレンタルサービスを行っているメーカーもあります。お問い合わせ時には前項に挙げた試料の材料、サイズ、関心領域を明確にしておくと、機器の選定や料金の決定までよりスムーズに進むでしょう。
※コムスキャンテクノ株式会社のX線検査受託サービス(詳しくはこちら)
JOHNANソリューション
JOHNANグループであるコムスキャンテクノ㈱は、「検査・分析機器の提供を通じて品質・安全性確保の実現に貢献する」ことをモットーに、約20年に渡り、多く装置の設計・製作のほか、X線検査受託サービスも行っています。まずはお気軽にお問い合わせください。
各種製品のご紹介
「ComscanX」シリーズとして下記のような製品ラインアップで販売しております。詳しくはコムスキャンテクノの製品ページをご覧ください。
ComscanX Desktop
名前のとおり卓上設置できるサイズで、マイクロフォーカスX線管を搭載しています。
ComscanX Mini
物質分析から品質管理にも使えるフルスペック仕様ながら、小型・低価格が魅力の装置です。
ComscanX Performance
上記の2機種よりも高倍率・高解像度の画像が得られ、中型・中密度から大型・高密度のサンプルに最適です。
ComscanX Premium
お客様の撮影目的に合わせて設計・製作する、「オンリーワンのX線CT装置」です。



X線検査受託サービス
非破壊検査をしたいけれど費用は抑えたいという方はぜひ当社のX線検査受託サービスをご検討ください。熟練のスタッフが最適な撮影条件を選定し、撮影いたします。
またX線CT装置のレンタルサービスも提供しています。初回ご利用時にはオペレーターによるディレクションを行いますので、X線CT装置撮影が初めての方でもすぐにご使用いただけます。試料の観察方法等についてもお気軽にお問い合わせください。
【特長】
- 多種多様なサンプルを最適な条件で撮影。難易度の高いサンプル撮影も対応。
- 極小サンプルから大きいサイズまで、ご要望に合わせて柔軟に対応。
- 高電圧でのX線CT検査受託サービスも提供。
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