塗膜を剥がさずに水中の金属測定を効率化する手法とは

船舶や港湾インフラなど、水中の金属構造物は常に腐食のリスクにさらされており、定期的な肉厚測定が欠かせません。しかし、従来の潜水士による作業は、安全面や塗装を削る手間の多さが大きな課題となっていました。本記事では、防食塗料の上からでも正確に金属の厚みを測定できるマルチエコー技術と、それをROV(水中ドローン)で運用する手法について解説します。安全で効率的な検査計画を進めるための参考としてご活用ください。
製品・サービスは、文末の「JOHNANソリューション」欄に掲載しております。>詳しくはこちら
1. 塗膜を剥がさず金属の厚みを測る「マルチエコー技術」
(1)背景と課題
船舶の船底、港湾の鋼矢板、洋上風力発電プラットフォームなど、水中の金属構造物は常に腐食の脅威にさらされています。これらの寿命や安全性を評価するためには、定期的な「肉厚測定(金属がどれだけ薄くなっているかの確認)」が不可欠です。 しかし、従来は潜水士が潜水して測定を行っており、安全上のリスクや高額なコストが課題でした。また、正確な測定のために金属表面の防食塗料や付着物を削り落とす(ケレン作業)必要があり、多大な労力がかかっていました。
(2)CYGNUS UTプローブの概要
英国Cygnus Instruments社が開発したUT(超音波肉厚測定)プローブは、水中での非破壊検査において世界的な信頼を得ています。 最大の特長は「マルチエコー(Multiple-Echo)方式」の採用です。3つの連続した超音波エコーを読み取ることで、表面の塗膜(ペイントや防食層)の厚みを自動的に無視し、純粋な金属部分の厚みだけを正確に測定できます。これにより、事前の大がかりな塗膜剥離作業が不要となり、ROVによる遠隔測定を現実のものとしました。
Cygnus G1 Probe Handlerの特長
- 自動アライメント機能:プローブを保持するマウント部が関節のように動く構造になっており、縦横両方向に最大15度まで可動します 。これにより、ROVが対象物に多少斜めに接近しても、プローブ面が自動的に測定面へ密着するように倣うため、ROVパイロットの操縦負担が大幅に軽減されます 。
- 軽量・堅牢・コンパクト:アセタール樹脂製で強度を保ちつつ、気中重量わずか0.3kgと非常に軽量です。
- 大深度対応:水深2000mの耐圧性能(Depth Rating 2000 msw)を備えています 。
2. ROV × Cygnus G1 Probe Handlerの活用事例
ROVを用いた肉厚測定を成功させる最大の鍵は、「プローブの面を測定対象の表面へ正確に密着させること」です。これを容易にするのが、小型・中型ROV向けに設計された「Cygnus G1 Probe Handler」です。 このG1プローブハンドラーと高機動ROVを組み合わせることで、以下のようなシーンで活躍します。
(1)船舶の船体・バラストタンクの検査(UWILD)
- 課題:定期検査のために船をドックに入れるのは莫大な費用と休業期間が発生する。
- 活用方法:停泊中の船の側面にROVを接近させ、G1プローブハンドラーの首振り機構を活かして、曲面のある船体外板にもプローブを密着させて肉厚を測定。
- 成果:ドック入りを回避し、水中に浮かべたままの検査(UWILD)を安全かつ低コストで実現します。
(2)港湾インフラ・鋼矢板の劣化診断
- 課題:岸壁の鋼矢板は飛沫帯から海中にかけて腐食が進行しやすい。
- 活用方法:ROVが岸壁に沿って潜行。MOGOOL M8の安定した推力で機体を押し当て、プローブを密着させてデータ取得。
- 成果:塗膜を剥がすことなく残存肉厚を数値化し、補修計画の優先順位付けに必要なデータを安全に取得できます。
(3)洋上風力発電プラットフォームのパイプライン検査
- 課題: 水中のパイプライン等の曲面に対して、遠隔操作でプローブを垂直に当てるのは非常に難しい。
- 成果: G1プローブハンドラーの「最大15度の可動域 」が曲面へのフィットを助け、確実なエコー取得をサポートします。
CYGNUS社の製品詳細については下記公式サイトをご参照ください。
3. JOHNANソリューション
対象物に機体を押し当てる作業は、従来のROVでは反発で姿勢が崩れてしまい困難でした。当社のMOGOOLシリーズは、高い推力と全方位への姿勢制御により、Cygnus G1の性能を最大限に引き出します。
下記機種や他の機種につきましては、下記の製品紹介をご覧ください。
(1)当社の推奨機種
①MOGOOL M8(全方位移動モデル)
Cygnus G1プローブハンドラーを搭載し、正確な測定を行うための最適なプラットフォームです。

- 自由自在なピッチング・ローリング:8基のスラスターにより、機体を前傾・後傾させたり、斜めに傾けたりすることが可能です。これにより、傾斜のある船体に対しても、ROV自体を適切な角度に調整して接近できます。
- 強力な押し付け推力と定点保持:測定中は対象物に機体を押し当て続ける必要があります。M8のパワフルな推力と姿勢制御システムが、潮流に負けない安定した密着状態を作り出し、プローブハンドラーの自動アライメント機能(15度の首振り )と相まって確実な測定を実現します。
- ペイロードへの影響が最小限:Cygnus G1は気中重量0.3kgと非常に軽量なため 、M8の運動性能を全く損なわずに搭載可能です。
②MOGOOL-PRO P3000-A
潮流のある現場には、P3000-Aをご提案しております。

(2)アフターサービスについて
メンテナンスや修理は京都の本社で実施しておりますので、安心してご利用いただけます。
センサーの統合テストや、操縦トレーニングについても、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
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