当社では、業界初となる新技術「パノラマスキャン」(特許出願中)を搭載した300kV マイクロフォーカスX線CT装置「ComscanX Performance 300-4343」を開発いたしました。2025年8月より撮像サービスの受付を開始予定です 。
「パノラマスキャン」は、従来の約1.7倍となる広視野撮影(Φ550mm、オプションでΦ700mm)を実現した撮影方式です。この新しい撮影方式と300kVの高エネルギーX線管を搭載することで、これまで撮影が難しかった大型アルミニウムなどの試料も非破壊検査が可能となります。
以下に「パノラマスキャン」技術の概要、従来のX線CT装置との比較画像、新装置の特長をまとめました。ぜひご一読ください。

当社の標準機シリーズの一つ「ComscanX Performance」に搭載されるX線管のエネルギー(物体を透過する能力)は、これまで230kVが最大でした。この管電圧では、大型のアルミ鋳物や大型の樹脂成型品などを透過することが困難でした。これを解決するには、もっと高い管電圧のX線管が必要なことに加えて、高エネルギーのX線に見合った広い撮影視野と、非破壊検査の実用に適した画質も必要です。

そこでまずX線管は300kVの発生装置を搭載し、厚さ約130mmのアルミを透過できるようになりました。しかし撮影視野は、最も大きい420mm×420mmフラットパネル(X線検出器)でも32cm直径(フルスキャン時)が限界でした。そこで開発したのが「パノラマスキャン」撮影方式です。これにより550mmΦの広視野、フルスキャン相当の画質を実現し、X線透過エネルギーと撮影視野のバランスが改善されました。


上記はアルミ鋳物部品の通常撮影(フルスキャン)と、パノラマスキャン方式撮影の比較画像です。横方向の撮影視野が拡大しているのがよくわかります。パノラマスキャン方式では通常の1.7倍の550mmΦの広視野で撮影できます(*1)。この新しい撮影方式の技術を図解すると次のようになります。
(*1) X線焦点とX線検出器の距離1000mm、X線検出器幅426mmの通常撮影時の撮影視野: 320mmとの比較。

上図のとおり、黄色で示したX線ビーム領域に撮影視野が含まれ、最大撮影視野はX線ビーム領域で描かれる最大直径の円になります。「+」で示した回転中心で試料を360度回転させて投影データの収集を行います。X線焦点とX線検出器の距離1000mm、X線検出器幅426mmであれば、320mmの撮影視野になります。

上図のように、2つの撮影視野の半分ずつをX線ビーム領域に入れて、「+」で示した2箇所の回転中心で試料を360度回転させて投影データ収集を行います(よって撮影は2回行うことになります)。

2箇所で得られた投影データをつなげると、上図のようにX線ビーム2つ分の撮影視野を得られます。このつないだ投影データを画像再構成することで、通常撮影(フルスキャン)の1.7倍の550mmの広い撮影視野の断層像が得られます。

さらに、同様の方法で撮影視野を1/3ずつ3箇所で撮影を行うと、フルスキャンの2.2倍の700mm撮影視野の断層像が得られます。
*こちらは標準搭載ではなくオプション機能になります。

開発の背景・意義
従来のX線CT装置では「X線ビームの領域内にしか撮影視野は存在しない」というのが常識でした。このため、大きな試料の撮影が困難でした。大きな試料を撮影するには当然大きな撮影視野を必要とし、それを実現するには大きなX線検出器と大きな筐体(X線鉛箱)が必要でした。
この問題を解決するために、撮影視野を何回かに分けてX線ビーム内に入れ投影データを収集するアイデアを思いつき「パノラマスキャン」の開発にいたりました。従来よりも小さなX線筐体、小さなX線検出器で撮影できるため、廃棄物の削減、エネルギー・資源の無駄使いを減らせるSDGSにも通じる技術と言えます。

・パノラマスキャン機能で業界初のΦ550mm広視野を実現(通常撮影Φ320mmの約1.7倍)。
・通常撮影(360度撮影)に相当する高画質。
・従来は撮影が難しかった試料(大型アルミニウム鋳物、大型樹脂成型品など) の非破壊検査が可能。
・自動フィルタ制御、高速画像再構成(オプション機能)

「パノラマスキャン」搭載の300kV マイクロフォーカスX線CT装置の実機を、JOHNAN株式会社 名古屋事業所(愛知県名古屋市)に設置いたします。中部・東海エリアのお客様には、大型試料の撮像サービスや装置導入に関するご相談をよりスピーディに承ることが可能になります。また、
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